「八栄八恥」と社会主義市場経済の実感

最近、テレビの番組と番組の区切りに、「八栄八恥」のキャンペーンCMが入る。「八栄八恥」は先月、胡錦濤国家主席が掲げたスローガン。別名「社会主義栄辱観」。「栄(栄誉)を高め、恥を改める」という主旨で、モラル向上スローガンなのだとか。向上は「祖国を愛することは栄誉、危害を加えるのは恥辱」、「人民への奉仕は栄誉、そむくことは恥辱」という具合。詳細は毎日新聞の「キーワードを読む」。など。


CMでは、軍人コーラスでこの「八栄八恥」が高らかと歌い上げられる。終わると、ダンディで渋いウィスキーのCMやさらさら長髪のお姉さんが登場するシャンプーのCMが流れる。中国が、「社会主義市場経済」の国であることを実感する瞬間である。

「中国ガオガオブー」パイロット版2号配信中。

中国と日本のちょっと笑えてタメになる情報マガジン「中国ガオガオブー」のパイロット版2号目を配信中です。目次は[今週のニュース・ガオガオ]反日デモ一周年/[中国メディア産業] 情報統制のホワイト&ブラック/[オリンピック・ゴーゴー]文明礼義でマナーマナー/[チャイニーズ・チベット]ケサルを謡う青年(予告)/[あとがき・今週のブラボー] 3元床屋です。お申込みは「中国ガオガオブー」サイトからどうぞ!

北京の地下鉄大改造。

北京の地下鉄1、2号線に自動改札が4月1日より導入された。はずだと思ったのだが、まだ、本格的な始動にはいたっていない。自動改札機はカバーがかかったままで、あいかわらず、改札口では係員のおばさんたちが、おしゃべりしながら切符をちぎってくれる。


北京の大衆紙「北京晩報」の報道によれば、5月からこれまでの紙の定期券が使えなくなるものの、いまだ130万人が交換していないとのこと。同紙ではトップで報じて、さっさと交換するよう促していた。


地下鉄1、2号線は、日本のODA円借款で敷設された北京初の地下鉄。冷房もなく、車両もだいぶ古くなったことから、2007年までに冷房付きの新車両に全面交換、さらにそれに先駆け、今年から全駅、自動改札を導入し、現在突貫工事で建設中のその他の地下鉄などと、同じICカードで利用できるようにする。しめて43億元なり(1元=約14円)。


ところで地下鉄駅には今、自動改札化にあたって導入されるIC定期券の通知が張りだされているのだが、そこに記載された批准元関連機関は北京市交通委員会、北京市発展改革委員会、財政局、北京市教育委員会、民政局、労働社会保障局、運輸管理局の総勢7機関。中国で、地下鉄の改札を自動化するのもかなりごくろうさんなことなのである。

武侠ドラマ、再びと「華流」

北京テレビの5チャンネルで、21:30から武侠ドラマ「小魚兒與花無缺(PROUD OF TWINS)」の再放送をしている。昨年はこれにはまりにはまり、おかげで私の中国語はパワーアップしたものの、1ヶ月ほどが空白で過ぎてしまった。中国語の鍛錬には、中国ドラマにはまるに限る、かもしれない。なお、武侠ドラマは、中国ファンタジーRPGのごとき中国武術アクションと愛と友情と冒険の大スペクタクル小説を元にしたドラマをさす(たぶん)。


さて「小魚兒與花無缺」は、48歳で早世した武侠小説家御三家の1人、古龍の「絶代雙驕」を原作に、監督は香港コメディのヒットメーカーの王晶、主演は香港俳優の張衛健(ディッキー・チョン)に謝霆鋒ニコラス・ツェー)、大陸の人気女優、袁泉(ユアン・チュアン)に範氷氷(ファン・ビンビン)というゴージャスぶり。ゴージャスというのはあくまで中国的にであって、日本でそこそこ知られているのは、謝霆鋒ニコラス・ツェー)と、あるいは香港ドラマ「カンフーサッカー」で主役を張っていた張衛健(ディッキー・チョン)くらいかもしれないが。


謝霆鋒ニコラス・ツェー)は陳凱歌(チェン・カイコー)監督の「無極(PROMISE)」で冷血クールな悪役「無歓」がはまり役だった美形役者。このドラマでも男禁制の「移花宮」で唯一の男性として冷血な女主に育てられた冷静沈着&めちゃめちゃ強い美形キャラを演じている。この人はつくづく、CLAMP系の漫画に出てきそうなクールな美男子役がはまるアニメ顔だと思う。


詳細なストーリーは、武侠ものに詳しいブログに譲るとして、田中的解釈によれば、孤児として全く別の環境で育てられた双子の兄弟、小魚兒(シャオユーアール)と花無缺(ホワウーチュエ)を巡る友情と切ないロマンと陰謀と冒険の青春アクションファンタジードラマだ。


各キャラの立ち方、ポップで快速な台詞回し、大どんでん返しのストーリーに、ついはまってしまうのだが、それにしても中国のドラマは悲恋と人死にが多い。このドラマもしかり。愛は成就されず、主人公と友情と絆で結ばれた脇キャラはがんがん死に、その死を乗り越えた主人公の武功(ウーコン、武術パワー)はレベルアップ、ボスキャラとの死闘がラストを華々しく飾る。やはりRPGなのである。


昨今、じわじわと言われている「華流」。あいかわらずまだマニアックな範疇に留まるが、武侠ドラマはやがて「華流」ブームに火をつけるに違いない。と、そう信じたいところだが、武侠ドラマが内包するオタク的性質を考えると、やはり「華流」はオタクのオタクたるものなのかもしれない。

サービス・ギャップ

日本でもらったWINDOWS MEのノートパソコンを、北京でADSLにつなげようと思ったがつながらない。たらいまわしを覚悟して、半ば絶望的に中国のNTTにあたる電話会社、中国網通(チャイナネットコム)に電話したところ、案内係のお姉さんは懇切丁寧だった。


しかし、日本で英語やカタカナ名のついた各部名称、OSとかネットワークカードはこちらでは漢字を使った意訳の中国語名となる。これを電話口で、中国語で言われてもさっぱりよくわからない。たとえば、「お客様のシートンは何ですか?」「シートン…?」「ピングオですか?」「林檎(ピングオ)…。ああ、系統(シートン)ね。OSはアップルではなくて」「OS?アップル?」とか、「お客様のマオのドンはいくつですか?」「マオって動物の猫(マオ)?」「いいえ、ですから、マオです。ドンがありますよね?」「ドン…ドンって灯(ドン)?光ってるやつ?」「そうです!」とか、「お客様のワンカーに問題があるのではないでしょうか」「カー…、カーというのはカードですね。ワン…ああ、網カー、ネットワークカードですか?」「ネット???」という具合。


お互い拉致があかないので、英語の案内サービスに電話を回してもらい、名称部分だけ英語で説明してもらったところ、要するに私の手元にあったモデム付属のCD-ROMでは、ドライバをインストールができないことがわかった。案内のお姉さんは「あとで、係りの者がお持ちします」という。礼を言って電話を切り、どうせすぐには来ないだろうし、2、3日待って連絡がなければまた連絡してみようと、朝風呂に入る準備をしていると、再び電話がなった。


電話局の係りのお兄さんからで、「この後、うかがってもいいですか」という。「いいですよ」と言ったものの、やはりいつくるかはわからない。夕方ごろにでも来るのかなあと思ってシャワーをあびていたら、20分後にピンポンとドアベルがなった。


すばらしく迅速な対応なのである。急いで服を着て、お兄さんを招きいれると、さわやかな20代後半くらいの彼は、さくさくとインストールまでやってくれる。それで万事解決か、と思ったところ、お兄さんがフリーズした。どうやら私のパソコン内の何かと、インストールソフトがコンフリクトを起こして、インストールが進まない。


お兄さんは神妙な顔で、何度も同じボタンを押すのだが、それ以上のことはできなそうだった。しかたないので、「パソコンメーカーにでも聞いてみるとよ」と告げると、「すみませんね!」と笑顔になった彼は、さっさと引き上げて行った。


サービスはすばらしく完璧だったが、結局、振り出しにもどってしまった。なお、前述の「マオ」というのは「猫(マオ)」ではなく、モデムのことだそうで、「MAO」と表記するのだという。なるほど、さっぱり漢字が思いつかなかったわけである。

カンフー始める。

カンフーを始めた。カンフー=中国拳法。代表的なところでは大極拳とか少林寺拳法とか、あるいはジャッキー・チェーン(?)の酔拳もみなカンフーだが、私がやっているのは意拳というちょっとマニアックなものであるらしい。らしいというのは、全く予備知識なしに始めたら、意拳だったのである。


中国拳法は非常に多種に渡る。刀などの武器を使うものを含めた中国武術全体では、いったい何百あるのだろうという感じだが、おおざっぱな分類では、地域的には長江を挟んで南北にわけた北派と南派、特徴的には道教的概念の大極拳のような内家拳と仏門系の少林寺拳法のような外家拳にわかれる。さらにいえば、前者は筋肉などを鍛えるハードパワー型で、後者は「気孔」などで知られるインナーパワー型とでもなるだろうか。学術的にはかなり難解で奥深く、こんなシンプルな区別にはならないようだが。


さて、私のはじめた意拳は、インナーパワーの内家拳である。したがって練習では、立ったまま、胸の前に両手でゆるく弧をつくり、イメトレというか感覚トレーニングをしてインナーパワーを鍛えるところから始まる。見た目はタダのヘンな人である。


しかし「『気』が××」といった概念的な宗教じみた話はなく、「ここを××したら××になる」とひたすら探求型で理論的で、理屈っぽい。そしてインナーパワーを鍛えながら、その次に、いかにそれを外に発するかという練習をする。


椅子に座ったままの仕事をしている私は、普段は脳の一部しか使っていないのだが、意拳をしていると、脳細胞を駆使しながら、体の各部分を意識し、効果的で効率的な動きを考えなければならない。脳みそと体がいっしょに動くというのは何十年ぶりかである。


意拳の歴史は、実は100年に満たないほどで、中国拳法の中では比較的新しい。現在、北京にある道場の先生は3代目にあたる。この先生、一見、するとただの人のよさそうなおじさんなのだが、弟子たちの話によれば、ひとたび打拳を繰り出すと、人が変わるのだとか。私はちょっと押されただけで、手首にあざができていた。


またこの先生、双子のお兄さんがいて、この方も達人なのだという。写真を見るとそっくりさんで、素人目にはどちらがどちらかよくわからない。さらに先生の息子も相当強く、奥様は美人で大の男をふっとばすという意拳の達人。一家でカンフー映画が撮れそうだ。


なお、意拳は非常に実践的で強烈な拳法という話だが、先生いわく、「新陳代謝がよくなるので、お肌もきれいになって、美容にもいいし、ダイエットにもなる。心臓病や胃腸病、高血圧や不眠症にもいいんだよ!」だそうである。

騒音の正体と老北京(ラオペキン)の謎

下の階の大改修工事が終了した。脳みそがひっくりかえるような騒音に、辟易したのは私だけではなかったそうで、大家のおじさんの話では、隣近所にさらに上の階の住人も、みな、団地の管理所へクレームに駆け込んだという。その大工事でできあがったものは、雀荘だった。


中国の雀荘は、おじさんたちのレクリエーションルームのようなものである。特に私の住む団地は、もともと胡同だっため、今でも住人の多くは古くから北京に暮す老北京(ラオペキン)で、ひまさえあれば、道端に小さなテーブルと椅子を出して、中国式の将棋やトランプをしている。


私の棟の1階には、机を2つおいたらそれでいっぱいになる小さな部屋があり、ここでもおじさんたちが集って、将棋やトランプ、マージャンをしている。夜中の2時、3時まで賑わっていることもしばしばあり、廊下には煙草の煙がモウモウと立ち込めている。


そんなわけで、私の家の近所では、彼らに遊び場(?)を提供するマージャン&将棋屋が増えているのだが、私の家の下の空き部屋も、はた迷惑な大工事の末、定年退職した老北京(ラオペキン)たちのレクリエーションの場と変わった。


そして今度は、夜中の2時を過ぎても、人の話声と笑声が下から伝わってくる。かなり盛り上っているようだが、一方、朝は朝で暗いうちから、太極拳をやっているおじさんや、道端で健康踊りみたいなものをしているご年輩の集団を見かける。北京のお年寄りは、いったいいつ寝ているのだろうかと思わなくもない。