タクシーの値上げ論争再びと報道の裏

20日のエントリー(石油の高騰に伴うタクシーの値上げに運転手が反対という話)に続いて、もう一つタクシーの値上げ話。先日、タクシーに乗ったとき、運転手のおじさんに「反対してるんだって?」と聞いたところ、「そーーーんなことはない!」との強烈な否定がかえってきた。


以前に乗ったタクシーでも、運転手は「値上げ、おっけい!」と諸手を挙げての賛成だった。「タクシー運転手が、客が乗らなくなるから値上げに反対している」という報道が、本当にそうした反対意見が多いのか、それとも背後にある組織的な反対意見の「創出」なのか、なんだかからくりがありそうだなあと思えてしまうところが、中国のニュースなのである。


たとえば、最近、中国では出稼ぎ労働者の待遇をあげようという政策を進めており、こういうときにかぎって、中国の出稼ぎ労働者の悲惨な状況を取材したルポなどが流れてくる。それは非常によく調べた涙もののルポであり、それはそれとしてすばらい記事だと思うのだが、なんとも複雑な気分になることは否めない。


中国の報道は、政策やその他もろもろの時事的情勢をみながら、ここぞというところでパンチを効かす。そうでなければ無視されるか、ヘタをすれば、飛ばされる。そもそも官制という言われ方をする中国のメディアだが、上からの圧力はやはり途方もなく強烈だと、私のような第三者でもときおり感じる。


さておき、運転手の間では、「2元値上げ」というのは共通した認識となっているようだ。しかし、その根拠になっていると思われる北京市運輸管理局の「タクシーの価格調整案」は4月26日に公聴会で審議にかけられるという段階。希望的観測を既成事実にすりかえて話しているでしょうと思わなくもないのだが、長年の経験値とカンにもとづく庶民の話の方が、あんがい、メディアよりも信憑性が高い、ということはあるかもしれない。