サービス・ギャップ

日本でもらったWINDOWS MEのノートパソコンを、北京でADSLにつなげようと思ったがつながらない。たらいまわしを覚悟して、半ば絶望的に中国のNTTにあたる電話会社、中国網通(チャイナネットコム)に電話したところ、案内係のお姉さんは懇切丁寧だった。


しかし、日本で英語やカタカナ名のついた各部名称、OSとかネットワークカードはこちらでは漢字を使った意訳の中国語名となる。これを電話口で、中国語で言われてもさっぱりよくわからない。たとえば、「お客様のシートンは何ですか?」「シートン…?」「ピングオですか?」「林檎(ピングオ)…。ああ、系統(シートン)ね。OSはアップルではなくて」「OS?アップル?」とか、「お客様のマオのドンはいくつですか?」「マオって動物の猫(マオ)?」「いいえ、ですから、マオです。ドンがありますよね?」「ドン…ドンって灯(ドン)?光ってるやつ?」「そうです!」とか、「お客様のワンカーに問題があるのではないでしょうか」「カー…、カーというのはカードですね。ワン…ああ、網カー、ネットワークカードですか?」「ネット???」という具合。


お互い拉致があかないので、英語の案内サービスに電話を回してもらい、名称部分だけ英語で説明してもらったところ、要するに私の手元にあったモデム付属のCD-ROMでは、ドライバをインストールができないことがわかった。案内のお姉さんは「あとで、係りの者がお持ちします」という。礼を言って電話を切り、どうせすぐには来ないだろうし、2、3日待って連絡がなければまた連絡してみようと、朝風呂に入る準備をしていると、再び電話がなった。


電話局の係りのお兄さんからで、「この後、うかがってもいいですか」という。「いいですよ」と言ったものの、やはりいつくるかはわからない。夕方ごろにでも来るのかなあと思ってシャワーをあびていたら、20分後にピンポンとドアベルがなった。


すばらしく迅速な対応なのである。急いで服を着て、お兄さんを招きいれると、さわやかな20代後半くらいの彼は、さくさくとインストールまでやってくれる。それで万事解決か、と思ったところ、お兄さんがフリーズした。どうやら私のパソコン内の何かと、インストールソフトがコンフリクトを起こして、インストールが進まない。


お兄さんは神妙な顔で、何度も同じボタンを押すのだが、それ以上のことはできなそうだった。しかたないので、「パソコンメーカーにでも聞いてみるとよ」と告げると、「すみませんね!」と笑顔になった彼は、さっさと引き上げて行った。


サービスはすばらしく完璧だったが、結局、振り出しにもどってしまった。なお、前述の「マオ」というのは「猫(マオ)」ではなく、モデムのことだそうで、「MAO」と表記するのだという。なるほど、さっぱり漢字が思いつかなかったわけである。