増殖の威力

最近、どうやら北京で流行り出しているのが、掉渣焼餅(ディアオチャーシャオビン)だ。少し前に新聞の小さな広告でチェーン店募集をしているのを見かけたと思ったら、家の近くで3軒ほど、この焼餅店を見つけた。


土家族(トゥチャ族)という湖北省西南部周辺に暮らす少数民族の食べ物で、売り文句が「中国式ピザ」。その名の通り、見た目もパン生地の感じもミニサイズのピザのようだが、上にのっている具はピリカラの肉そぼろあん。パンのもちもち感とピリカラあんの香ばしさが美味。


ネットで見るかぎり、上海の方でブレイクし、昨年末ごろから北京にも進出しているようだ。アリババというネットショッピングサイトに掲載されていた「掉渣焼餅で1ヶ月2万元(1元=14円、約30万円)」という記事によれば、原価は0.68元、売価は2元。最近のブレイクで1日1000枚ほどは売れるので、1日あたりの利益は1360元。ここから毎月の加盟料(2000-4000元)や最初に投入した設備を引いても、2万元くらいの稼ぎにはなるという計算。


とらぬなんたらな話ではあるが、中国では儲かるとなるとたちまち同種の店が増殖する。最近、いつのまにか出現している掉渣焼餅店もその1つなのだろう。


ところで、掉渣焼餅を食べながら道を歩いていると、向かいから自転車でやってきたおばさんに交差点の真ん中で呼び止められた。「それ、みんながおいしいって言ってるけど、どこで買ったの?」と聞く。「郵便局の隣」と答えると、「あらそ、ありがとう」とおばさんは去って行った。なんとも中国らしいおおらかかな一幕だった。