大連

薄曇。瀋陽から列車で4時間、昼前に大連に着く。ホームに降りると、湿った空気の匂いがした。それは透明な水の匂いでどこか甘い。一方、瀋陽の埃の舞う乾いた空気は苦かった。


大連に残る満州時代の建築街を、ホテルを探して歩くうちに、道に迷った。大連は点在する広場から放射線状に道が伸びているため、碁盤の目の北京を歩き慣れていると混乱する。この碁盤の目はロシア帝国時代に作られたものだという。


その後、日露戦争で勝利した日本軍がこの地を統治するにあたり、管理しやすいようにと街を作った部分が碁盤の目になっているというのは、地元の人から聞いた話。地図で見ると、中央が網の目、西側が碁盤の目となっている。


バックパックを背負って坂を上ったり降りたりしているうち、途中で力つき、結局、繁華街の裏通りの汚いホテルにチェックインをした。ホテルには銭湯が併設されているのだが、それは男子用のみで女性は利用できない。


夜、フロントでマッサージを頼むと、その「銭湯」専属の巨大な胸の年増なお姉さんが、部屋までマッサージをしにきてくれた。お姉さんは胸を強調するタンクトップとミニスカートで現れ、赤い口紅をぬった口をガハハとあけて笑うと、隙間の開いた黄ばんだ歯がのぞいた。マッサージはあまり上手ではなかった。


25歳で結婚し、8歳になる子供がいるという。2年前に離婚して、瀋陽からこの大連まで出てきたとのこと。仰向けになった私の腹部をもみながら、「結婚はしないほうがいいわよ〜」と、お姉さんはまた、隙間の開いた歯を見せて笑った。