評価

前にも書いたのだが、写真家の鷹野隆大さんが木村伊兵衛賞を受賞した。その鷹野さんに「おめでとう」電話をして思ったのは、権威的な賞の受賞は、受賞者はもちろんながら、その作品を観る側にとっても、幸福なことなのかもしれないということだ。


鷹野さんの写真は分かりにくい。最近の作品はもっぱら、女に見える男とか、美少年の裸である。前に個展を見に行ったときは、美少年が上半身裸でズボンを脱ぎかけた等身大以上の大きな全身写真を、真ん中のペニスの部分でちょんぎって、ちょんぎったペニスの写真は写真の裏に貼ってあるといった作品が並んでいた。


こんな写真を見せられると、既存の価値観みたいなのをゆすぶられて、どう解釈していいものやらよく分からない。面白いように思えるものの、本当に面白いかどうか、いまひとつ自分だけでは判断ができない。鷹野さんの写真には、こうしたぐらぐら感みたいなものがある。今回の受賞で、観る側は安心して「ぐらぐら」感を満喫できるようになった。


賞とか評価といったものは、受賞者よりも、実はその受賞者の受け手にとって、意味のあるものではないかと思う。


鷹野隆大「イン・マイ・ルーム」
場所:ナディフ(東京・原宿) http://www.nadiff.com
期間:2006年3月17日(金)−4月23日(日)