セロハンテープを巡る争い

北京でセブンイレブンにカレーを買いに行ったところ、蓋がカパカパですぐに開いてしまう。「これではこぼれてしまうから、テープを貼って」と言おうとしたところ、「こぼれる」と「テープ」の単語がふっとんだ。それで「貼って」と、レジの女の子に告げると、女の子はプイッと横を向いて「不行(ブシン・できません)」と告げた。


「できないわけないでしょ。できないなら、返金して」ともめることしばし。通りかかった店長代理のお兄さんも捕まえ「金かえせー」と告げると、またもや「「不行」。「その態度はなんだー」と怒ること、さらにしばし。もしも日本人留学生か駐在員がこれを見たら、「中国に(よくない意味で)染まった日本人が(いらん)騒ぎを起こしている」と思われたに違いない。


「日本人の責任者を呼べー」とごねると、レジのおねえさんはお店の裏に逃げ、店長代理のお兄さんの態度が軟化。奥から紐を持ってきて、それでカレーのパックをしばろうとする。「しばらなくていいから、貼ってくれればそれでいいんだから」と繰り返したところで、店長代理は「あ〜」とセロテープを持ってきた。ようやくコミュニケーションギャップが埋まったところで、最後にさらに箸をくれようとしたのだが、カレーは箸では食べられないのである。


この手のつまらない争いは、たぶんこちらの「こうあってほしい」とか「こうあるはず」という潜在的な認識と現実とのギャップから生じる。これがセブンイレブンでなく、地元系コンビニなら、たぶん「このくそ店員が〜」と腹の中でおさめていたと思う。


しかし、他のコンビニより価格も高めで、中層階級がターゲット的ラインナップの日系コンビニでは「店員が親切にサービスしてくれてしかるべき」という先入観がある。この先入観とのギャップに、私はプツッと切れるのだ。もっとも、プッツンしたって、何の役にも立たない。しみじみ、中国で無我の境地に達したいと思う。