バッシングの技

『「俺様国家」中国の大経済』を読む。すでに昨年末には、日本の一部で話題になっていた本なので、いまさらではある。バッシング本は読んでいてけっこう疲れるので後回しになっていたのだが、これを一種の中国バッシング本というならば、日本の中国バッシング記事や本の中では芸達者だと思う。


日本の中国バッシングも、中国の日本バッシングも非常にしばしば、どっちもどっちだなあと思うのは、双方ともに絶対的な「己」があり、それはそれでいいのだけれど、その「己」を正当化するために、相手のあらを探しけなし貶める点だ。私は、自分の価値を正当化するために、相手を見下げて笑うことを、楽しいとか面白いとはどうしても思えない。


「俺様国家〜」では、中国のトンデモぶりに関する「そうそうそうなんだよね〜」的トホホなツボの突き方と、たとえば日中間の靖国問題で「すべては戦争責任に関する処理が終了してしまっている(つまり問題が存在していない)にもかかわらず」などといった「え、そうだったけ?」的内容に脳みそが刺激されて面白かった。


もっとも著者本人が、文中で中国のデータの信用ならなさについて書きながら、けっこうポンポンと中国のデータを列挙している。そしてその根拠がいまひとつ明確でないため、どうも胡散臭さが残ってしまう。


また、靖国問題については、たとえ戦争責任に関する処理が終了していても、それで「問題が存在しない」といえるかといえば難しい。実際のところ、日本人の間でも「あの戦争」に対する評価は定まっていない。多くの場合、日本も戦争で大変だったという意識はあっても、「日本は侵略した!」といわれて、「戦争責任」を問われるとあまりピンとこないのが現実ではないだろうか。


それで、「責任を果たしてない!」といわれれば、「そうだったけ?」とパンドラの箱みたいなものが開いてしまい、「問題なんかない!」という人々と、「日本はもっと反省すべきではなかったか」という人々と「日本の賠償ってどうなってたっけ」といった人々が入り乱れる。靖国をひつこくごり押しする中国も中国だが、それにより、日本の中の「いまひとつ解決していない問題」がゆすぶられているのが現実だと私は思う。


さておき、「いやもう、中国ってさあ〜」という人ほど、実は中国好きだったりする。好きというか、とりつかれてしまうというか。この著者も、かなり中国に「とりつかれてしまった」人ではないかと思う。