人気ブログの閉鎖騒動

ブログを巡り、ちょっとした騒動があった。三八節とよばれる女性の日に、週刊紙「三聯生活週刊」の記者、王暁峰と娯楽誌の女性記者、ナイ猪(milk pig)のブログが突然、真っ白になったというもの。どちらも中国では人気のブログで、特に王暁峰は江沢民のスローガン「三個代表」をもじった「帯三個表(3つの腕時計)」のペンネームやそのひねくれ辛口ブログ「按摩乳」で知られるちょっとした有名人である。


この騒動について、人気の大衆朝刊紙「京華時報」(3月15日)は、シンガポール紙からの転載の形で「中国ブログ、西側メディアをからかう」と伝えている(ネットではこの記事が見られない)。同記事によれば、実はこのブログ騒動、ロイターが「また当局の情報統制か」と伝え、さらにBBCなどの西側メディアが報道したのだが、実は王暁峰氏のジョークだったというもの。


実際、王暁峰氏を知る人々は彼ならやりかねないと思ったようだ。同紙の記事中ではドイツのテレビ局のインタビューに「ロイターは確認に来なかったよ」と応えた王氏のコメントを紹介。さらに「長年、西側メディアの中国報道には『傲慢と偏見』があるが、はたして西側メディアの信頼度はいかがなものか」と締める。


中国メディアの西側メディア批判はさておき、ことの次第について、ロイターの報道(http://today.reuters.com/news/newsArticle.aspx?type=internetNews&storyID=2006-03-18T063750Z_01_PEK76136_RTRUKOC_0_US-CHINA-BLOGGERS.xml&archived=False)では少し様相が違う。中国メディアでは「いたずら」と報じてるが、事件後、王氏への電話インタビューでいたずらだったのかあるいは政府筋からの圧力があったのかと問うと、同氏は「西側メディアには何も語りたくない。西側メディアが報じると、どんなことも自分の意図とは違うものになってしまう」とコメントしたと伝える。また事件のあった8日、ロイターから同氏に2回の電話を入れ、メールも送ったがつながらず、翌夜中1時に王氏から電話があったものの、受け損なってしまったという経緯を紹介。最後に「時がくれば話すだろう」という同氏のコメントで締める。中国メディアにコケにされてしまったロイターの、メンツがにじみ出るような記事である。


真相はさておき、現在、両ブログは何事もなかったように再開されている。3月9日の王氏のブログには、「冗談は好きだけれど、今回はみんなをからかうつもりも、ましてや愚弄するつもりもなかった。今回の事はみなが思っているようなことでも、外国メディアが思っているようなことでもない。皆さん、気にかけてくれてありがとう、またすみません(田中訳)」というメッセージが掲載されている。


どこまでも深く権謀術数入り乱れるこの国では、この国の人々のやり方というか、闘い方がある。「中国の情報統制」をここぞと伝える海外メディアは、所詮は、部外者にすぎない。もちろん伝えることに意味がないとは思わない。ただ、第三者であることからは逃れられないのだと思う。