抗日コメディ

机に積みあげたままになっていた雑誌やらなにやらを整理していると、買ったまま忘れていたDVDが何枚か出てきた。そのひとつが、昨年の日中抗日戦争60周年記念で制作された抗日コメディ「老少爺メン打鬼子(老若、鬼子を打つ)」。お店のお姉さんに笑えるDVDはないかと聞いて勧められたものだ。


映画の内容は、暗号情報(?)を持つ日本人女性のスパイをかくまうアメリカ兵が、ひょんなことから中国の漁村に逃げ込み、この日本人女性の行方を追うちょびひげ丸眼鏡のいやったらしい日本人隊長率いる日本軍と、米中一丸となって闘うというもの。


コメディなので、日本人隊長の入れ歯がポンポンとんだり、アメリカ人兵士がカウボーイみたいにロープをくるくる回して日本兵をやっつけたりしているが、この種のギャグは、CCTVで放映されるようなくそまじめで重たい抗日ドラマを見飽きている中国人でなければ笑えないような気がする。


ただ、「抗日」も60年もたてば記号化する。私が日本人だと言ってるのに「面白いのよ〜」とこのDVDを勧めたお店のお姉さんの頭の中でも「抗日」は記号化し、目の前の生日本人である私の存在とはあまり関係なさそうだった。


なお、山の中からは「芸妓回億録」つまり「SAYURI」のDVDも出てきた。買ったままどこにやったのかと思っていたら、こんなところにあった。中国では章子怡が日本人男性と混浴しているとか、渡辺謙に組み敷かれるとかで物議を醸し、結局、放映禁止となったままだ。しかし、海外での放映と同時に海賊版が流れていた。たいがいのDVD店でも、「ある?」と聞けば、店の奥から出てくるだろう。この種の発禁で誰が得をするかといえば、海賊版業者以外の何者でもないのである。