電話の機微

携帯が鳴り、見れば中国人男性の名前が表示されている。誰だったっけと思って出たが、声を聞いても誰だかわからない。黙っていると、「なんだよ、もう忘れたの?」と相手は不満な様子。よくよく聞けば数ヶ月前に1度、ひょんなことで会ったことのある男だった。


一度会っただけで、その後連絡もしなければ、忘れても仕方ないと思う。忙しいからと切ろうとすると、相手はダラダラしゃべり続ける。いつ北京に戻ったのとか、最近どうしてるのとか。だから忙しいっつってんだろ、と思ったのだが、中国人の男に、気配で察してもらうというのは概ね非常に難しい。相手はしゃべりたければしゃべり続けるだろう。


相手の機微に敏感に反応する日本人は、この国ではなかなか生きにくいと改めて思う。