元宵節と正月明け

久しぶりにいつもの喫茶店に行くと、少々しゃれたつくりの店内に、見慣れない労働者風のおっさんがいた。この店は写真学校を卒業した若者が自分で作った店で、普段は母親が店番をしている。河北だったか河南だったの人で、ちょっとなまっているので、私にはなかなか聞き取れない。


カウンターにいたおっさんに声をかけると、奥からいつものおばさんが出てきた。旧正月は実家に戻らず、みな北京に呼んで一緒に過ごしたのだという。おっさんは若き店主の父親だった。その他、中年男性やら若い女性やらもいて、トランプをやっている。客というわけではなく親戚か何からしい。旧正月があけたばかりで、客がいないとおばさんがぼやいていた。


旧正月の休みはとっくに終わっているが、中国ではまだずるずると正月が続いている。私のマッサージの先生からは「切符がなかなか取れなかったので、これから帰ります」というのんきなメールが届いた。


この正月ムードも明日の元宵節までだ。元宵は旧暦の1月15日、新年最初の満月の日で、「湯円」と呼ばれる中身入り白玉団子を食べながら家族団らんする日である。また灯籠を飾る灯節でもあり、古来、この灯籠を見るという理由でなかなか合えない恋人たちが出会える中国式バレンタインデーである。爆竹もバンバン鳴らす。


そして今年も、闇工場で作られた闇「湯円」のニュースが流れていた。闇「湯円」は安価ながら、食べ物として危険性が高い。むやみにその辺の店で、量り売りの「湯円」を買ってはいけない


いずれにせよ、ようやく中国の正月も明ける。日本の正月がゆるやかに次の年へと移行する「静」の正月であるならば、毎年、民族大移動の中国の正月は、何かがごっそり入れ替わるダイナミックな「動」の正月であると思う。