わさびのヘン

仕事で中国の山の上に駐在しているという日本人サラリーマンに会った。連絡先が分からないため、御本人の許可なく登場していただいてしまうのだが、2つの山を行ったり来たりして、北京に下りてきたのは久しぶりだそうである。大企業の駐在員といえば、リッチなマンションでリッチな暮らしをしているイメージがあったのだが、同じ大手でも、山の上ではかなり気の毒な境遇である。


何が大変かといえば、賄いの食事が一番つらいという。あるときは腐った魚、あるときは大量のわさび入りのり巻きが出たというのはご本人談。


それで思い出したのだが、中国人経営の日本料理店にいくと、大抵、刺身にてんこもりのわさびがついてくる。それは時には赤ん坊の拳ほどの大きさで、知り合いの中国人はこれを醤油にたっぷり溶かし、ぐちゃぐちゃとかき混ぜる。


見るたびに違う、と思うのだが、言ったところで聞いてもらえるわけではない。そもそも素材の味をそのまま楽しむというのは日本的感覚で、味付けまでしっかり楽しむ中国的には、わさびの鼻がしびれる刺激があってなんぼのものなのだろう。根本的に感覚の異なるものは相容れない。わさびの使い方の違いは、ちょっと日中間のミゾにも似ている。