裏門の話

北京のマンションはブロックごとに囲われており、入口が数ヶ所にかぎられる。このため入口から一番遠いところにある建物の住人は、柵のすぐ向こうに見えている店までゆくのに、ぐるりと遠回りをしなければいけない。


安全管理上はしかたないのだが、面倒であることこの上ない。それで、私の住むマンションの一角は、ちょうど裏手にあたる柵の鉄棒を外して、小さな通り道ができている。


しかしセキュリティ上問題があるため、マンションの管理組合によってしばらくするとふさがれる。飲んで帰ってきたとき、この通り道がふさがれていると、氷点下10度のなかを正面ゲートまで回る間に凍死しそうである。


それでもしばらくすると、少し離れたところにまた、通り道が出現している。いっそ、ちゃんと裏門を設けて保安員を立たせておいたほうが、安全上はいいような気がしないでもないのだが、そんなことをするとまた管理費が上がるだろう。


新築マンションは管理費もばかにならない。私のマンションは年間の管理費が1ヶ月の家賃に相当する。管理組合と住人のせめぎ合いもときどきニュースに上る話で、私の知人が市内に買った高級マンションでも、管理組合が儲け主義に走り、住民の利益を損なっているということで、やめさせるのどうのと建議をしているところだという。


そんなわけで、私のマンションの裏手の柵には、通り道ができたり消えたりする。これも北京の近代住宅事情の端くれなのだ、というと大げさだろうか。