北京的オタク考

下校時間に中学校の近くのマクドナルドに行くと、そこは中学生に占拠されていた。マックは、中国ではちょっとリッチなファミレス感覚だと思っていたのだが、北京市内の中学校に通うニューリッチな家庭の子供たちにとっては、ただの溜まり場なのかもしれない。もっとも注文するわけでもなく、友達としゃべっている子たちもいるが。


ところでこうした10代半ばから20代前半を中心に、北京もオタクが増えていると思う。1つに漫画・アニメグッズ店を街中で見かけることが増えた。店には中学生や高校生が訪れている。店を開いて1年という青年は「最近上海でも流行り始めているし、新しい投資にいいかと思って」と話す。爆発的な収入にはならないが、食べてゆくくらいの糧にはなるとのことだった。


また、コスプレの人気も高く、地下鉄やバス亭でオタクだなあと思う女の子や男の子に出くわすことも少なくない。オタクはオタクでも、コミケ系と最近日本で流行りの電波系には違いがあり、北京で見かけるのは前者、いわゆる80年代のコミケに集っていたようなオタクたちである。といっても、一般的にはどうでもいい違いだろうが。


彼女、彼らの特徴は、例えば髪型がヘンにアニメ的である。前髪の半分が長くて半分が短く、短い方を赤く染めているとか、一部だけ妙に長く伸ばしているとか。同じ年代のオシャレ系とは一線を画し、かといってまったくこだわりがないわけではない。垢抜けないちぐはぐな懲りようが、オタク的なのである。


しかし、現在の中国の状況では、日本的オタク産業の大きな成長は望めないだろう。漫画アニメの版権許可は下りにくく、正規のキャラクタグッズ産業も限られる。この国で一般的に推奨されるのは、「道徳」にかなった「良質」の国産品だ。増殖するオタクたちはアンダーグラウンドな世界で、萌芽したばかりのオタクカルチャーを醸造している段階にある。


日本のオタクは今や社会的認知を得て、かつてのオタクから随分変貌を遂げてしまったが、ここ北京には、なつかしい元祖オタクな中学生や高校生が生息している。彼らを見ていると、オタクを育てるのは民主主義的自由さと資本主義社会のバブルさなのかもしれないと思う。