温泉リゾート

上海在住の人に取材の申し込みをすると、「今、北京にいます」という。もともと上海まで行く予定だったので、これはラッキーとアポを入れたところ、「××休暇村にいるので、北京から車で2時間くらいでしょうか」という話になった。


北京は北京でも、郊外の休暇村で会議に出席中なのである。最近はこうした「温泉リゾート会議」が多い。北京郊外には会議室付き温泉リゾート村も増殖しており、バブルの波及効果なのである。


以前、漫画雑誌社などが主宰する漫画・アニメ新人賞を取材しに行ったときは、人民大会堂で授賞式をしたあと、北京の外れにある香山公園という山中のホテルでシンポジウムが開催された。東京でいえば、国会議事堂で授賞式をして、高尾山の中腹にあるホテルでシンポジウムを行うようなものである。


参加者はホテルで一泊、翌日はまたシンポジウムの続きをやって、午後からは香山公園の散策となる。私は単なる取材なのでホテルには泊まらない。このためシンポジウムの会場まで参加者とともにバスで移動したあとは、自力で市内まで帰り、翌朝また、自力で会場までいかねばならない。


会場で会った「南方週末」という週刊の全国新聞の記者も同じ状況で、「何はともあれ、帰ってまた来ないと」と言う。彼女は正規社員ではなく、フリーの専属記者のため、とにかく原稿を書いて送らなければ、その分、収入が減ってしまうのだそうである。結局その日は、日が暮れた山中をふもとまでてくてく歩くことになった。


今回は温泉リゾート会議に参加中の人を訪ね、日暮れにバスで出掛け行くと、2時間ほど走って降ろされた先は真っ暗な闇にしずんだ農村だった。それらしきものは何もない。困って通りをうろうろしているところ、闇タクに拾われ、さらに舗装のない道をのろのろと走った先に、ようやくピカピカ光る温泉ホテルが現れた。


取材相手にはお待たせしてしまい、大変申し訳ないことをしてしまった。タクシーで直行すればよかったのだが、それにしても北京郊外の「リゾート地」は、ちょっとしたサバイバルな場所なのである。