中国的不良少年

夕方、近所の食堂に入ると、そこは下校途中らしいジャージ姿の中学生でいっぱいになっていた。中国の中学、高校の制服はジャージなのである。みな、がやがやと賑やかに話をしながら、麺やチャーハンをかきこみ、夜の塾に行く前の一休みなのだろう。


と思って見ていると、一角に煙草を吸いながらビールをラッパ飲みしているジャージ姿の一団がいた。まぎれもなく中学生なのだが、店のおばさんもおじさんも特に注意するふうでもない。見た目はごく普通のちょっと小生意気そうな、けれどなかなかオシャレな少年たちだ。おもわず、中国では喫煙飲酒に年齢制限がなかったかと思ってしまったものの、そんなことはない。法律では、18歳未満には酒も煙草も売ってはいけないことになっている。最近、ゲームセンターも厳しく、身分証に提示を義務付け、未成年は入場できない。つまり彼らは、中国的「不良少年」たちなのだろう。


ちなみに中国の「未成年犯罪防止法」によれば、親や監督者は未成年の喫煙や煙草を禁じる監督義務がある。そのほか、サボりや外泊、賭博、エロサイトやエロビデオの閲覧を禁じる監督義務もある。一方、中国的統計によれば、中国での喫煙者は全国で3億人以上、このうち500万人が小中学生で、平均年齢14.5歳だそうである。


中国的不良少年たちは、ひとしきりビールを飲むと、「お勘定」と言って立ち上がった。その拍子にレンゲが落ちて割れた。一瞬、顔を見合わせた少年たちは「ごめんなさい…」と店主の顔を見ると、店主は「いいよ、いいよ」と笑顔を返した。少年たちはもう一度「すみません」を繰り返すと、何事もなかったように店を出てゆく。後には空き瓶と吸殻が、何かちぐはぐなもののように散乱し、店主のおじさんはもくもくとそれを片付けていた。