「熟年単身」その後。

場末のショッピングセンターで、強烈な匂いを放つ今にも壊れそうなトイレに入ると、2つある個室は両方とも使用中で、片方のドアの前には、トイレの匂いと同じくらい強烈なメイクのおねえさんがいた。


頬は赤と黄色でまぶたが紫。赤と青が目に刺さるような極彩色のミニスカートから、やはり極彩色のタイツに包まれた針金のような足が伸びている。堆積が2倍くらいに膨らんで見える毛皮のコートを着込み、頭のてっぺんにはちょんまげのように結ばれた髪が噴水のごとく飛び出している。


「それでいったい何杯飲んだよ」とおねえさんはトイレのドアに向かって話す。「何杯も飲んでないわよ」とドアの向こうから声が返ってくる。「ふうん、それでその男は」と強烈な顔のお姉さん。「いや、でもさ。こっちもまあ酔ってたし」とドアの中。もう片方のドアは閉まったままでうんともすんとも音がせず、私の後ろには人が並び始める。


その間にもおねえさんたちの会話は続く。話しているくらいならとっとと用を済ませて出てきてほしいところだが、延々と続く。どうやら男と酒を飲んでどうしたこうしたという話らしい。「でもさ、私も若いときは二鍋頭(アールゴトウ、北京の強烈な白酒)を2本くらいはいけたんだけど、もうだめね」とドアの中。


若いころって、いったいいくつだ?とふと思ったところで、ドアが開いた。出てきたのは茶髪に目張りの効いたヤマンバメイクのゴージャスなおばさんだった。数日前の日記で「熟年単身」について書いたが、これがいわゆるその「なれの果て」かもしれない。