北京的銀座でお試しエステ。

王府井のショッピングセンター内に新設されたエステサロンの1200元コースを200元でできるサービス券をいただいた。これは日本でいうと銀座プランタン内のエステサロンの1万8000元コースを3000円くらいでできるサービス券を頂戴したような感じである。(多少無理があるが)


エステといえば北朝鮮で1度、北京で地元エステに1度行ったことがあるものの、本格エステは初めて。ショッピングセンターに併設された高級マンションの一角にあり、入口で出迎えてくれた受付嬢は、北京では貴重な「温和な笑顔」を浮かべてていた。


まず皮膚の状態をマシンでチェックしながら「乾燥してますね〜」としみじみ言われ、その後、シャワー付きの脱衣所でローブに着替えて個室へ移動。着替えている間、温和な笑顔のお姉さんは、私のロングコートをぎゅうぎゅうロッカーに詰め込んでいた。


コースは背中のオイルマッサージから始まり、顔のマッサージ、ニキビ処理、パックと続く。エステティシャンのお姉さんは柔らかく甘い声で「乾燥してますね〜。今ならプラス600元(約8000円)でスペシャルパックができますよ〜。クリスマス限定のキャンペーン割引カードの販売は明日までですよ〜」と繰り返す。


私が「終わってから説明聞くから」とか「口頭で聞いても中国語はよく分からない」などとかわせば、「お客さんホントに乾燥しているから、いろいろしたくなっちゃうのよ〜〜。600元のパックはどうですか〜〜」とそれはもうキュートな声で、静かな攻防戦が続く。


チェーン展開している比較的大手のこの店は、高級店路線で顧客は日本人や香港人が中心になるという。日本人や香港人の数が増えたとはいえ、そのうち高級エステに通える財力を持つのは、月に数千ドルを稼ぐキャリアウーマンか駐在員の奥様くらいだろう。パイ取り合戦もおのずと厳しい。サロン側としては極端な金額のキャンペーンをエサにして、次につなげなければワリにあわない。


もっとも北京に限らず中国では、エステサロン(美容院)はもうけ産業の1つだ。人民日報のサイト「人民網」に掲載されていた24日付け投稿記事によれば、「エネルギー、医療、教育、葬式、道路、有線テレビ、不動産、オンラインゲーム、美容関連が10大暴利産業」だそうである。エネルギーと葬式と道路と美容がいっしょくたに並んでいるのもどうかと思うが、少なくとも美容産業のもうけの秘訣は、業界筋によれば原価が安く、売価が高いところにある。


そしてその格差から儲けを生み出すために、お姉さんはセクシーな声でささやくのだ。「乾燥してますね〜。こんなに乾燥していると、エステには毎週通ったほうがいいですよ〜」と。なんとかかわして帰宅したものの、ビンボー人としてはどこか敗北感の残るお試しエステ体験となった。