カナダ華僑

本日、北京に戻る。カナダ発東京経由北京行きのノースウェストを利用したので、機内は英語を話す華僑で溢れていた。隣に座ったおじさんは、カナダ国籍を持つ北京生まれの北京育ちで、中国を離れて10年になるという。現在はアメリカ系の企業に勤めているとのこと。親子3人連れで、子供はまるまると太っている。


カナダでの仕事は悪くはないが、やはり生活習慣も文化もまるで異なるため、たまに北京に戻るとほっとするのだと話す。また最近は、彼のような中国からの移民が急増し、カナダのビザは取りにくくなっているとか。そういえば、私のマッサージの先生もカナダで働くのだと英語の勉強に励んでいたが、なかなか実現は難しそうである。


おじさんは私の見ていた日本の新聞を指差し、「どうして日本の新聞にはタイトルに漢字が書いてあるんだ?」と聞いた。漢字は日本の文字でもあるのだということは、時と場合によってはあまり認知されていない。説明すると、おじさんは分かったような、分からなかったような顔をして、「ところで小泉首相靖国参拝を、日本人はどう思っているのかな?」と聞いた。


こうした疑問は、それが大陸の中国人であれ、カナダの華僑であれ、あまり変わらない。日本では反対する人もいるが、支持する人もいて、ただ、政治や政府の動向に無関心な人は多いのだと当たり障りないことを返すと、そんなもんかなと首をひねる。逆に「カナダの人は日中関係についてどう見ているのか」と聞いたところ、カナダのニュースはカナダ国内とアメリカが大半で、多くの人は政治に関心はないので、「結局どこも同じだね」とやはり無難なところで落ち着いた。


その後、おじさんはカナダの白人は中国に関心はないけれど、自分たち華僑はとても関心を持っているとか、共産党政治には反対する人も多いとか、そんな話をぼちぼちして、やがて北京が近づいた。おじさんには共産党嫌いと日本嫌いが同居する。4月の反日デモは、海外の民主化運動勢力が操作していたという話があったが、中国的人々を一致団結させる反日は、共産党維持と同時に、党の打倒をかかげる民主派勢力にも利用されうる。どちらに転んでも日本は嫌われ役で、この場合、実際の日本など実はどうでもいい。


最後におじさんは、「君の中国語はもうちょっとだな。もっと中国人みたいに話せないと」としめくくった。