下流ブーム

中国に限らず、海外が長い日本人は「憂国の士」が多いと思う。海外で日本について問われれば、「日本では」とか「日本人の場合は」といった風に日本のありようを意識せざるを得ない。特に中国のような国では、日本は日常的に責められることはあっても誉められたりはしない。それゆえ、「日本はいかにあるべきか」を考えざるを得ないシチュエーションが生じる。


そして海外が長い中堅クラスの日本人と話をしていると、「日本はこのままではだめだ」「日本が心配だ」といった話を聞く。実は、最初のうちは安保闘争世代の「世の中いかん」病みたいなものかと思っていた。けれど実際、私も北京暮らしが3年近くなり、先の選挙での小泉政権の「圧勝」、それに続く造反議員の首切りや「小泉独裁体制」、憲法改正問題など、ネットを中心としたピンポイントの日本の情報に触れていると、日本に何が起こっているのか、この国はどこへ向かっているのかと思ってしまう。


同時に日本の変化の流れを感じる一方で、それに対するメディアのツッコミは聞こえてこない。「いったい日本はどうなってるんだ?」とけっこう気合を入れて帰国したのだが、世間は下流ブームで、空気はいたってゆるかった。ついでに、近所の市民プールに行けば、水温は少しも不快さを感じないほどぬるかった。北京の市民向け温水プールは「温水」というくせに、最初に入った瞬間、全力で泳がないと凍えるほど冷たいのである。


さておき、自分たちが「下流」と称している間はいいけれど、これが海外で外国人から「日本人は下流」などと言われると、達観したふりをしたところで、なかなか悔しいもんだぞと思うである。