至福の甘栗

中国版セントラルヒーティング、暖気(ノワンチー)がいつまでも入らないと思ったら、大家のおじさんが私の部屋の暖房代を払ってくれていないだけだった。最近の新設マンションはガスも電気も暖気も各部屋ごとのカード式である。暖気はシーズン前にカードを購入し、部屋のメーターにかざすとカード情報を認識して開始する。


ガスや電気はカードの課金を忘れてメーターのメモリがゼロになると突然止まる。夜中に止まっても、それは自己責任なのである。さておき、大家のおじさんに暖房費を払ってもらい、ようやく暖かい冬がやってきた。


このごろ、亀ゼリーに飽きて栗にはまっている。日本で栗といえば「天津甘栗」だが、北京では「懐柔油栗」である。懐柔は北京郊外の一地区。近くに露店の甘栗屋があり、通常は10元(130円)ほどする良質の懐柔油栗が1袋6元(80円)で売られており、格別おいしい。


皮がぽろりと取れ、身はねばりとコクがあり、濃厚な甘みが口に広がる。北京の甘栗店はたいてその場で焼いており、出来たてを食べられる。湯気があがっている栗を袋にざくざくと入れてもらう。熱いうちは特に甘みともちもち感が強く、至福の一時である。


あるとき、買った栗を食べながら家に戻ってくると、団地の前でばったり隣の家の母子に出くわした。小学生の娘には「日本人が栗食べてる〜〜」と珍しい動物のごとく言われたが、彼女たちが教科書で習う「日本鬼子(リーベングイズ)」も、栗ぐらい食べるのである。


ところで日本のサイトでは、中国産甘栗が1㎏1800円で売られている。中国で買えば高いものでも1㎏260円くらい。なかなかボロイ商売なのである。