マッサージ師の夢

中国でマッサージというと、タイ式など最近流行りの各国各種マッサージもあれば、漢方医の専門マッサージ、専門性の高い「盲人按摩」、簡単なものでは美容院のメニューの1つである肩もみサービス「保健按摩」、さらにサウナやマッサージ店、床屋などでやってくれる「特別按摩」などがある。「特別按摩」はマッサージする場所が特別な男性専用のマッサージである。


さておき、私がいつも行くマッサージ専門店の先生は、この道10年のベテランで、東北出身の30歳。東北の専門学校を卒業し、深センで数年稼いだあと、北京の今の店に移ってきた。深センでは月に数千元の稼ぎになったそうだが、激務のため、そこそこ稼げて実家にも帰りやすい北京に、奥さんと子供と一緒に引っ越してきたのだとか。


最近は英語を熱心に勉強しており、カナダで働きたいという。聞けば、カナダ在住の華僑の知り合いから、カナダで稼ぐメリットをあれこれ教えてもらったとのこと。カナダにはチャイナタウンがあり、マッサージ師の職も少なくない。店を開いた場合は税金がかなりかかり面倒なので、雇われマッサージ師で稼ぐのがいいのだとか、そんな話なのである。


暇さえあれば、英語のテープを繰り返し聞き、私のマッサージをしていても「not only but also」はどうやって使うのかなどと聞く。中国の人は熱しやすく冷めやすく、夢もまた大きい。そういえば、知り合いの中国人夫婦がそろってポンと仕事をやめ、カナダに行ってしまったという話を聞いたこともあった。距離も時間も後先もあまり気にしない、よく言えば大胆な、ある意味無謀な、けれどあきれるほど元気でパワフルな人々である。


私のマッサージの先生も、そのうち本当にふらっとカナダに行ってしまうかもしれない。