嫌悪

朝日新聞ウェブサイトに掲載されている山井教雄氏のアニメコラムにときどき笑ってしまうのだが、先日の「靖国神社」は小泉首相が歩きながら、龍の尻尾を踏んづけ龍がくるりと振り返り、虎の尻尾を踏んづけ虎が振り返り、最後にたどり着いた靖国神社で「二度と戦争は起こしません」とあつ〜く参拝するもの。無料の会員登録をしないと見られないのだが。


先日、タクシーに乗ったとき、運転手から「日本人?」と聞かれて「日本人」と答えると、運転手はしぶい顔になった。タクシーは中国暮らしの日常の中で、自分とは最も関わりのない市井の人々と出会う場の1つである。このため、たまにあからさまな日本人嫌いに出くわすことがある。それ以外は知り合いの知り合いなどなので、向こうも気を使うし、こちらも気を使う。ときどき、くそったれなことを言うおやじもいるが、それはどこの国でもたいして変わらない。


さてその日本人嫌いの運転手は、私を捕まえ、かつての戦争で日本人は本当にひどいことをした、最近は尖閣諸島で中国の領域を侵しているという。嫌なら話をしなければいいのに、一言二言意見を言ってみたくなるのが「嫌悪」という感情でもあるらしい。そしていつものことだが、聞きかじった知識を披露するだけなので、「聞いただけの話をそのままベラベラ話すのは愚かだと思う」という主旨の中国語をガーッと並べると、運転手には「う〜ん、アンタの中国語はよくわからないね」とかわされた。


夕方、地下鉄に乗っていると、向かいの席に座ったおじさんが広げた新聞に、「日本は平和憲法放棄?」というタイトルが踊っていた。自民党憲法改正案に関する記事で、普段は平和憲法など紹介されることはほとんどないのだが、こういうときは大々的に出る。この国は日本の変化には過敏だ。


いずれにしても日本は今後、変わってゆくだろうし、変わらざるをえないだろう。そして対中ということでいえば、在中の日本人は当分「受難」の日が続きそうだ。ただ、外国で日本がののしられるのを経験してみるのも、実はそんなに悪くはないと思う。