駅ビル

夜、以前、住んでいた地下鉄駅の近くを通ると、駅ビルが完成し、テナント募集の電飾の巨大な文字がきらきらと光を放っていた。これは私が北京に来たころから工事をしていたもので、最初は何もなかったところに、いつのまにか3本の山型ビルが黒々と骨格を現し、気付けばすでにオープンを間近に控えている。


車に乗り、駅に向かって立体交差の道路を走ってゆくと、点々と続くオレンジの街灯の先にこの3本ビルが現れる。それは「惑星ソラリス」か「ブレードランナー」か、海外のSF映画に登場した日本の高速道路のサイバーな1シーンを思い出させる。緩やかな弧を描く道路の向こうには、未来が続いているようである。


その3本ビルの下には、物売りが雑多な商品を広げ、偽の領収書を作る人々が集り、3輪タクシー乗りの日焼けたおじさんたちがずらりと客待ちをしているのを私は知っている。ときどき、真っ黒に汚れた赤ん坊を抱えた女性や、板に乗った足のない少年がうずくまっていることもある。


中国にはいくつもの層がある。それはけして埋まることなく、この国はこのまま輝かしき未来へと進んでゆく。それは是とか否とかそういうものではなく、この国はそのように在り続けるのだろう。