ショッピングカード

北京で暮らしていると、東京同様、店のカードが増えてゆく。日本の場合は買い物をしてポイントを貯める形式のカードが多いが、中国のそれは前払い式のデポジットが多い。


たとえば、私が利用しているネイルサロンは最初に300元(1元=13円)をデポジットして会員になる。そうすると1回の利用料金が2割引きになる。カードの使用期限や1回の利用金額の制限はない。


最近、急展開している靴の修理チェーン店でもこのシステムを採用している。靴の修理店などそんなに利用しないだろうと思うのだが、北京では靴はよく壊れ、汚れ、そして直してきれいにするものなのである。雨染みの出来た靴をもってゆくと、少々安っぽい色には変わったが、きれいになり、しかも格段にはきやすくなって返ってきた。


こうしたデポジット制の前払いカードは、店にとって確実に一定金額を獲得できるかしこい手段が、客にとってはなかなかシビアである。


一度、ネイルサロンのカードをなくしたことがあった。店に行くと、お姉さんはファイルを10冊を持ってきて、そこから私の登録シートを引っ張り出した。カードの再発行は面倒らしく、番号を告げられたのだが、3歩歩くと忘れる。その後行くたびに、増えてゆくファイルのなかから、お姉さんに登録シートを見つけてもらう。何かの事故でファイルがなくなれば、カードのない私は、自分のデポジット金額を証明するものがない。


また、一度カードを作ってしまうと、しばらくは現金を持たずに利用できるため、次第にタダでやってもらっている気になり、勧められるまま、よけいな保湿サービスまで受けてしまう。あっという間にデポジットはゼロになり、まんまと店にはめられる。


以前、マッサージ店で1000元のカードを作ったときは、マッサージ師の腕がいまいちで、日に日に客足が減っていった。中国の店はある日突然つぶれるため、行ってみたら店がなくなっていたなどということもあるのである。幸い、カードを使いきるまで、店は存在していたが。