長距離バスと中国高速道路

国慶節の休みが終わる。多くの中国企業は8日が仕事始まりとなる。このため大連から北京まで7日の切符を買おうとすると、船も飛行機も列車もすでに売り切れ、最終の夜行バスだけが残っていた。本当は天津まで渤海を船で渡りたかったのだが。


大連から北京までは列車で最短9時間、バスでも9時間。リッパな高速道路が開通しているので、予定では夜9:30に出て翌朝6:30には到着する。もっとも途中でバスが壊れたり、渋滞に巻き込まれたりしなければの話だが。


中国の長距離バスは各地ごとに各社の乗り入れになっており、地方によっては個人でバスを購入、路線に参入するケースもある。西部の辺境地を旅行していたときに、バスのドライバーから聞いた話では、各路線ごとに乗り入れ本数が規定されているという。距離が長ければその分収入もよいが、距離に応じて規定されたバスのランク、たとえばシートがベッドになっている寝台仕様のバスは購入資金もかかる。


そして各地各様の長距離バスは、当たり外れが激しい。今回も5分間に出発したバスは新品だったが、私が乗ったバスは年季の入った中古で、高速道路を1時間走ったところで故障した。料金は同じ300元(1元=13円)で、列車よりも高いのである。


バスが止まると、寝ていた人々がもぞもぞ起きだし、何だ何だとざわめき始めた。ドライバーや添乗員からとくに説明があるわけではないので、外で修理をしているらしい音を聞いて、「故障だろう」ということになる。


その騒ぎのなかでも高いびきで寝ている男性がいて、妹らしき女性が「お兄ちゃん、お兄ちゃん、バスが壊れたんだって」と声をかけると、男は「あああん」と寝返りを打って、再びいびきをかき始めた。バスは爆笑に包まれが、男は眠り続けていた。窓の外では、風が吹いたらひっくり返りそうなほど荷物を積んだトラックが、次々と通り過ぎて行った。


中国の高速道路建設の歴史は約20年。1990年にはわずか500km程度であったが、2004年末には3万kmを超え、中国側報道によれば、アメリカに次ぐ世界第2位となった。同時に今後30年間で全長8万5000kmの道路網を整備する「7918構想」が提出された。なお、日本の外務省の対中ODA実績概要によれば、中国の道路建設に投じられた有償資金協力総額は約3000億円。これは中国ではあまり知られていない。


修理が終わるとバスは再び走り出し、その後、何事もなく、翌朝8時過ぎには北京に到着した。