国家のシステム

中国政府の国会、全国人民代表大会全人代)で、昨年、汚職で摘発された公務員が4万人を超えたことが発表された。外国人には、実に中国的なキワモノニュースだが、こと中国にとっては非常に深刻な問題だと思う。


腐敗や汚職が日常茶飯事の状況にあっては、国としてのシステムが確立されない。形だけシステムをつくったところで、地方の末端まで行き届かない。非常に単純な構図でいえば、たとえば中央政府が環境汚染対策の号令をかけ、法律を整えても、それを執行する地方の機関が地元企業と癒着し、金をもらって適当にお茶を濁してしまうと、いつまでたっても問題は解決されない。当然、中央も監視を強化するだろうが、元来、監視を担う機関が、また金をもらって地方と癒着すれば、監視の役目を果たさない。


中国は経済的にはリッチになっているが、同時に国のシステムとしてはヤバイ状況にあるのではないかと思う。この国の農村問題も単なる貧富の差の問題とはいえない。貧富の差から生じるさまざまな社会問題を解決するための国家的システム、たとえば社会保障や司法制度とその調停・調整機能が働いていないことによる不平等さが問題なのである。そしてそれはしばしば、日本でも報じられる農村や地方都市での暴動につながる。


彼らは自らの貧乏な状況に対して怒っているのではない。国がそのシステムとして人民を等しく扱うしくみとそれを執行する能力を持っていないことに対して怒っているのである。それは一党独裁から生まれた弊害であるかもしれないが、その弊害を実際問題として、最も痛感しているのは中央政府だろう。汚職問題が頻繁に取り上げられ、地方の暴動などが海外ニュースに漏れてくるところにも、政府の意図がのぞく。


民主化、ということがしばしば言われる。しかし私は、民主化すればこの問題がすぐに解決できるとは思えない。イラクもそうだが、突然、借り物のようにやってきた民主主義が、人々にあまねく平等なしくみを作り出せるとは限らない。


いずれにせよ、リッチになりはじめた中国では、環境問題にせよ人民の権利問題にせよ、地方まで機能する国家のシステムづくりが問われている。