タクシー運転手のお小遣い稼ぎと娯楽場所管理条例

タクシーに乗り、信号待ちをしていると、車道をつかつかとやってきたお兄さんがなにやらカードのようなものをサイドミラーにはさんでいった。それを取った運転手に何かと聞くと、実直そうなおじさんは肩をすくめた。見ればそれは近所の「大浴場」の宣伝で、タクシー運転手が客を1人つれてゆくと75元(約1000円)の報奨金を出すという。


ただし、注意書きでは「女性客には報奨金がでません」とのこと。つまり「大浴場」の看板をかかげたナイトソープの客集めである。タクシー運転手向けのこうした宣伝は多いのだという。タクシーに乗った男性客が「ちょっと気持ちよくなれるとこ知らないか」と聞いたとき、運転手はすかさずこういった店に案内する。報奨金の金額はさまざまで、現金はでないところから20元(300円)というところもあるそうなので、75元はなかなかの奮発ぶり。「今度、この近くでお客さんに聞かれることあるといいね」というと、運転手は小さく笑っていた。


フーゾクといえば、国務院発令つまり国家の法律として、「娯楽場所管理条例」が3月1日より施行された。カラオケやナイトクラブなどの営業管理法のようなもので、営業場所や営業時間などのほか、未成年の雇用や詐欺行為、賭博、買春などを改めて禁じ、罰則を設けている。


中にはカラオケボックスなどの部屋の壁を透明にして、中を見えるようにしなければならないなどという項目もあり、店ではきっとあの手この手で妙策を繰り出すのだろうなあと思える法律だ。そもそも中国人の知人によれば、夜の店を娯楽場として営業許可を取ると税金が高くなるため、飲食店として登録することが多いという。


ちなみにこの法律、総則第4条で、国家機関およびその工作員、文化主管部門、公安部門の工作員とその夫または妻、直系の親戚、三代以内の血縁者やその者と婚姻関係にある親戚は「娯楽場所」を営業してはならず、その営業にたとえ形をかえても参与してはならないとある。


かなり念入りに公務員の参与を禁じたこの条項だが、実際のところ、公安の中にも幹部御用達の高級ナイトクラブがあり、ちょーー美人なお姉さんたちがご接待してくれるという。温家宝の名で発布されたこの国家的フーゾク営業管理法、ホントのところは、お役人の荒ガセギをがっちり禁止しようということなのかもしれない。