外来語の進化的用法

道を歩いていると、レストランの入口に「海鮮超市」という看板があった。「超市」は「スーパーマーケット」で、英語からの直訳である。レストランで「超市」も変な話だが、中国の田舎町では売店が少々大きくなった程度の店にも「超市」の看板が掲げられていることがある。どのヘンが「超(スーパー)」なのかといえば、おそらく「いっぱいそろっている」程度の意味なのだろう。そう考えると、レストランの「海鮮超市」は海鮮がふんだんというくらいの意味かもしれない。


中国語を日本語に翻訳していると、特に外来語を漢字表記した言葉で、中国的に進化をしているものがある。例えば、「ハイエンド」の中国語である「高端」は、最近は電化製品に限らず、高級品とか高所得という意味で使われる。


「網絡品牌客戸」などという中国語もあった。直訳すれば「ネットワークブランドユーザー」。このままではわけがわからないが、前後の文脈から「ブログやコミュニティ、サーチエンジンなどの有名サイトを利用しているユーザー」という風に取れる。中国語的「ブランド」の「品牌」や「明牌」は、日本語以上に利用範囲がおおらかだ。


同様に、利用範囲が広すぎていつも訳に困るのが「平台」。そのまま訳すと「プラットフォーム」となるが、中国語では「版権貿易の平台」とか「交流の平台」とか使われる。昨年出たばかりの「現代漢語辞典第5版」によれば、「ある仕事を進める上でのすべての環境や条件」とある。中国語的には便利な言葉だが、そうした言葉は往々にして日本語に訳しづらい。


そういえば昔、日本で「ファジィ」という妙に「ファジィ」な言葉が流行ったことがあった。あの「ファジィ」な感覚は、日本であのカタカナを利用していた日本人にしか分からないだろう。中国で漢字になった外来語の進化的用法も、あんな感じに近いかもしれない。