2005年の大晦日にあたり

朝、起きると雪が降っていた。たちまちあたり一面、白く染まってゆく。ようやく年の瀬らしくなったと思っていると、あっという間に雪は止み、あとには灰色い不機嫌そうな曇天と融けた雪で茶色く汚れた道路が残った。年はまだまだ明けそうもない。


中国は明日から3日間、新年の休日である。あくまでも新年の休日であって、正月ではない。そして一般の中国企業では、明日からの休みのために、本日の土曜日も出勤する。中国の法定休日は休みために働くのである。


年末にあたり、大変いまさらながら『坂の上の雲』を読んだ。日露戦争の旅順攻略のくだりで、国慶節に行った旅順を思い出した。本当は読んでから行くべきだったのかもしれないが、先入観なく観光したかった。


乃木希典が難攻に難攻を重ねて大量の死者を出した旅順攻略の舞台二〇三高地は、本当にのどかな観光地である。こんもりした小高い丘のような山に、ぞくぞくと中国人観光客が遠足気分でやってくる。


中には日本人もいて、露店の写真屋が用意する白いペラペラの軍服衣裳でカメラに収まっていた。桜の季節はさらに旅行客が増えるという。


瀋陽の郊外にある日中戦争時の「虐殺村」にも行ったが、それは日差しがうらうらとまぶしい田舎道沿いのさびれた博物館の一角にあった。博物館自体は改装予定ということでなかばくちかけていた。


こんな言い方がいいのかわからないが、すべては本当に過去のことなのだと思う。中国の「抗日記念」スポットもあるいは靖国神社も。


ある日中の交流会で、中国人が日本人にたずねた。「日本は海外にどのような日本像をアピールしたいと考えているのか」と。あいにくそれに答えられる日本人は、その場にはいなかった。けれど思うのは、日本の未来をどうしてゆきたいのか、実は日本人自身にもよくわかっていないのかもしれない。もっとも目下のところ、私の問題は私自身のこれからをどうしてゆきたいかということだが。


ところでちょうど今、東京に留学中の中国人の友人から、挨拶メールが届いた。大晦日は「変装して王子の狐行列」に参加するという。いったい、彼女が日本で何をしているのかナゾである。