サラリーマンの1人文化

夕暮れ時、都内のファーストキッチンに入ると、サラリーマンなおじさんたちがティータイム休憩をしていた。営業など外回りの仕事だろうか、背広姿の中年男性がケーキとコーヒーでくつろぐ姿にはサラリーマンの悲哀というより、淡々とした日常感のようなものが漂う。


これは北京ではほとんど見かけることのない光景だ。北京で喫茶店が増えたといっても、それは基本的には若者たちの行くちょっとオシャレでモードな空間である。中年サラリーマンがケーキを食べながら一休憩するほどの日常さはそこにはない。そもそも中年男性向け喫茶店、たとえばドトールや滝沢のような店を見たことがない。


茶店に限らず、1杯飲み屋など日本には中年男性が1人で過ごせる場所が少なくない。中国では、食堂で中年男性が1人で食事をしている風景を見かけることもないわけではないが、それをターゲットとしたマーケットが形成されているとはいえない。


そう考えると、ローカルな視点ではちょっとわびしさも漂うサラリーマンの1人文化は、世界的にはカルチャーとして実は成熟しているといえるのかもしれない。もっともそれが成熟したところで、何かが豊かになるかといえば、そんなことはないのだろうが。